脳内で麻薬を
「明るくて、究極のポジティブシンキングで。
でも、ときどき、脳内で麻薬を作ってるときがあって、
ついていけなくなるんです。」
もう7年も前になる。
私立中学の面接試験。
合格はしたが進学はしなかったミッション系の女子校で
「あなたのお母さんはどんな方ですか?」
という質問に、ワガムスメはこう答えたそうである。
それを聞いた、面接官のシスターは、
一切、顔色を変えたりはしないで
「まぁ、素敵なお母さまですねぇ。」
と、受け流してくれたのだという。
ありがとうございました。
「脳内で麻薬を作ってる危ない女」に対してさえ、この寛容さ……。
受験がぜんぶ終わった頃、
あっけらかんと話すムスメの事後報告を聞きながら、
正しいキリスト教精神の鷹揚さと立派さと無関心さに、
わたしは心底、揺さぶられた。
いまでも、自分自身の発する想像や妄想の毒に
からめとられて酩酊状態になったとき
ああ、いまのわたしのこの状態こそ
幼い彼女がせいいっぱいの語彙で表現しようとした
「体内で麻薬を育ててる、うちのお母さん」ってヤツかぁ~と、
懐かしくも不思議な気持ちになります。
(このブローチは、たしか、試験の前にその女子校のバザーで購入。
かわいくて、大好き。手放せません。)